麻生太郎「とてつもない日本」読了

 この本は、麻生太郎氏が外務大臣に着任してから、日々の政務をきっかけ考えた事や、ホームページのコラムに書いた事をまとめた本。これを読めば氏がどのような思いで日本を見ているか、だいたい分かるようになっている。
 麻生太郎というと、マスコミではわりとタカ派なイメージで書かれることが多い。漫画オタクとかいうイメージが最近加わったけど(笑)だけども、この本でナショナリズムについて書かれている部分を読むと、氏のナショナリズムについての考え方は相当バランスが取れている事がわかる。少し引用。
 

 恐らく、日本が最大のコストを払って学んだ難問とは、ナショナリズムの扱い方だったのではないかと思われる。

 (中略)

 日本の近現代史は、民主主義の激情が、容易にナショナリズムの昂揚へと転化しかねない事実をも教えている。発展途上にある若い民主主義は、あるいは民主主義を希求しようとする若いハートは、激しやすい性格を持っている。民主主義は、必ずしも平和への一直線の道を示しているわけではない。
 昭和の日本は、まさしくこの状態を通過した。

 けっこう、冷静にナショナリズムの勃興の歴史を見つめておられる。まぁ確かに、この人は吉田茂の孫であるわけで、吉田茂マッカーサーと交渉を繰り広げている間に、孫として祖父の姿、また祖父を通して戦後日本の移り変わりを見てきたわけだし、自然にそういう視点が身に付いたのかもしれない。それでいて、社長として会社経営した経験もあり、海外留学の経験もある、それらがの経験が全部、今の外務大臣の仕事に生きているのが伺い知れる本だった。この人はホンマモンの政治家、と言えるだろう。