「自然」なことは最善?

 男性が言うにはちょっと憚られる話題ですけど、ラボ内でちょっと話題になったのを切っ掛けに、「生物科学専攻」の看板を掲げている以上、逃げちゃいけないな思ったので敢えて書きますね。

 女性の友人で、月経のときいつも辛そうにしている人がいて、「ホルモン剤(いわゆるピル)飲んだら症状が軽くなるらしいよ」と言ったら、「自然じゃないから嫌」と言われて。まあ、男が無理に勧めるのも変だし、本人がそれを望まないのなら仕方ないかと思って、その時はそのままだったんですけど・・・。

 しかしよく考えるとですね。一年中妊娠可能で、しかもそれが20年とか続くのって、人間だけなんですよね。その間、240回も月経サイクルがまわるんです。これって結構体に負担が掛かってるのではないかなと。

 野生の動物はどうなってるかというと、妊娠に適した時期のみ発情して、あとは休んでます。あと、大体は発情期ごとに毎回妊娠し、数回子供を産み、うまく子孫が残るくらいになったら、体の衰えが来る前に寿命(感染症や怪我含む)が来ます。つまり月経サイクルはそれほど空回りしないんですよね。人間も昔はそうだったんですよ。栄養が無かったせいで初潮も遅かったし、未婚期間が短く、出産回数も多い。そして医療が発達してないので、若いうちに亡くなる。*1

 しかし今は栄養状態がいいから早く体が成熟しちゃって、かつ結婚年齢も遅れてるから、「妊娠可能だけど妊娠せず、その結果毎回月経サイクルが空回りしている」という状態が長いんですよね。子宮の組織も卵子のまわりの細胞も月経のたびに毎回入れ替わるので、体に与える負担って馬鹿にならないと思うのです。

 現在、女性の子宮ガンが増加しているんですが、高齢化というガン共通の問題以外にも、子宮ガンの確率が月経回数に比例しているという指摘もあるんです。あと乳ガンも、出産経験のない女性で明らかに確率が高い。これはつまり、月経の空回り回数が、進化の過程で獲得した「生物学的に想定していた回数」を超えてしまったことによる症状なのではないか、と言えると思うんです。

 「ホルモン剤」は、ホルモンによって妊娠に近い状態を作り出す、ということなので、実はこれを上手く使って、子宮への負担を減らした方が本来の自然の姿に近いのでは?という考え方も、あり得るんですよ。 海外では子宮ガンを防ぐ効果が広く宣伝されていることもあり、使う人も多い(らしい)ですが、日本では薬に対する不安感が先にあるのかあまり普及していないようですね。まあ僕は男なので、実際に外で言うとキモイと思われる恐れがあるし、こうやってブログに書くぐらいしかできないのですがね・・・。

 というわけで、「自然」な状態って、実は一般的に考えられている前提をよく考えて見直すと、その前提自体が既に「手を加えられた自然」であったりするので、さらに根本的なところまで立ち返って、よりベターな手の加え方を模索する、というのが良いのではないかと僕は思う、という話でした。延命治療とか、臓器移植とか、難しい問題が色々ありますよね。そう言うときにこの考え方をすれば、袋小路に陥らないのじゃないかなと思います。

*1:僕は学部生の時にウイルス性の高熱で生死の境をさまよいましたし、僕の弟も学生の時に盲腸をやっているので、昔だったら確実に死んでいたと言えるでしょうね。