ポスドク残酷物語

ちょっと気になる番組があるブログで話題になっていたので僕もコメント。

7月3日 NHK クローズアップ現代

にっぽんの“頭脳”はいかせるか〜苦悩する博士たち〜

今、「博士号」を取得しても、希望の職に就けない人が急増している。90年代に国が科学振興の一貫として博士課程の学生数を2倍以上に増やしたにもかかわらず、大学でのポストが増えないからだ。欧米では産・学が緊密に連携し、"ドクター"が、最先端の技術開発をひっぱっているのと対照的である。不安定な身分のまま働き、中には40歳になっても年収は400万円、企業への就職もできず、派遣社員として生活している人もいる。番組では、日本の頭脳・ポスドクたちを取り巻く厳しい現状と、"頭脳"を活かせない日本の問題点を探る。
(NO.2437)

最近テレビを全く見ない私はこれ見逃してしまいました。ちょっと思う事はいろいろあるのだけど、とてもすぐ書ききれないのでまた後日書くとして、今日は僕自身がドクターに行ってどうだったか、そして今の後輩たちにどう思っているかを書きます。

僕自身ドクターに行くかどうかはけっこう悩みました。就職活動といっても、特に心の底からこれがしたい!ということが無かったので。しかし、やっぱり科学の世界には興味がある。ただ一つ心配なのが将来の見通しが見えない事。これをギリギリまで迷ったあげく、どうせ1度きりの人生なのだから、悔いなくやりたいことがやれる方がいいか、ということで、家族に頭を下げ、進学を認めてもらったんです。父はやっぱり、できれば自分たちももっと勉強をしたかった世代ですから、息子がこう言うとやっぱり認めてあげたくなるようで、(他の家庭からすれば甘いかもしれないけど)、親のすねかじりも続行(苦笑)そして不良債権となったわけです(爆)

だけど、経済的、時間的損失はたしかに大きかったけど、科学者としての基本的な視点はほぼ身に付いたし、(別の事で)修羅場をいろいろ経験したせいで、コミュニケーション能力も身に付きました。あとは業績が足らないからオーバードクターしてる訳ですが。…これはまぁ自分でなんとかするっちゅうことで。

というわけで、今の後輩たちに何か言えることは無いかと我が身を振り返ってみると、やっぱりドクターに進む事でいろいろ犠牲にして来たものは大きかったと思います。甘酸っぱい青春とか(笑)、20代で結婚・30代でマイホームとか。でも、なんとか粘っていると、他では得られない経験が得られる事も事実。後はそれをどう使うかと、何がしたいか、それをドクター、ポスドクの間に見つけられたら、一応ペイできるかな…と思います。ただ、粘れるだけのタフさと、健康な精神と肉体、あと悩みを共有出来る友人が無ければきついと思います。あとは経済的な支持基盤…これは僕1人の力ではどうもできないので、偉いさん方に宜しくお願いしますということで。

あ、あれですよでも後悔はしていませんよ?ただ僕でも運良く周りに恵まれたので留年しつつも今でも元気にやれてますけど、知ってる人には精神を病んでしまったのも居るし、結局博士取得を諦めて就職へ路線変更したのもいます。みんな僕より優秀だったんですけどね。僕もちょっと巡り合わせが違えば同じようなことになっていても全然おかしくない。それくらい厳しい、ということです。ポスドクの皆さんはホント大変なところ頑張ってらっしゃいます。その人たちが、誇りを持って、自分の分野に来たいという若者に胸を張って“おお、よく来たね”と言えないのが辛いところですね…。ほんと、なんとかならないかなぁ。